アフリカゾウの象牙100頭分密輸 大阪税関が発見

朝日新聞 2006(平成18)年10月06日金曜日

 
 ワシントン条約で商業取引が全面禁止されているアフリカゾウ約100頭分の未加工象牙と大量の象牙の印材が8月、大阪南港で荷揚げされた輸入貨物の中から見つかり、大阪税関が押収していたことがわかった。押収量は印材を含め3トンを上回り、取扱業者によると市場価格で約10億円分に当たるという。商業取引が全面禁止された89年以降で最大の象牙密輸事件とみられ、大阪税関は大がかりな密輸組織があるとみて大阪府警と共同で関税法違反(無許可輸入)などの容疑で本格捜査に乗り出す。
 
 大阪税関などの調べでは、象牙はインドネシアから8月に大阪南港に入港したコンテナ船の貨物から見つかった。
 
 コンテナ約70個に1本の象牙を3等分した未加工品が計608個入っており、約200本分に相当するという。ほかに、

直径1.5センチ、長さ数センチに加工された象牙製の印材約1万8千本も袋に小分けされて入っていた。

 
 輸入申請書類の品目と異なることから押収、形状などの特徴からアフリカゾウの牙と断定した。貨物の受取人となっていた大阪府内のリサイクル関連業者の事務所を関税法違反(脱税)容疑で家宅捜索し、経営者から事情聴取した。この経営者は象牙密輸について関与を否定したという。
 
 同税関は象牙のDNA型鑑定を専門機関に依頼する予定で、ゾウの生息地域などの特定を進める。
 
 同税関などによると、象牙が入っていたコンテナはインドネシア国内の港で、アフリカに寄港した可能性のある船から日本に向かう船に積み替えられたという。
 
 米国の非営利の科学教育団体「ナショナル・ジオグラフィック協会」(本部・ワシントン)は、アフリカ中部・チャドの国立公園周辺で、アフリカゾウ約100頭が殺され、大部分のゾウの死骸(しがい)から牙が抜かれているのを同団体の調査隊が発見したと、8月末に発表している。同税関と府警は、輸送ルートを含めてチャドで殺されたゾウと密輸事件との関連についても調べる方針だ。
 
 財務省関税局によると、89年以降で国内最大の象牙密輸事件は、91年4月にフィリピン船籍の漁船が沖縄県の漁港に持ち込み、押収された799キロ(62本)。